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キヤノン 50mm f0.95とは
f0.95。それは人間の眼よりも明るいレンズ。
キヤノン7用標準レンズの一つであり、市販の写真用レンズの中では最高に明るい大口径レンズです。その明るさは人間の眼の4倍で、夢のレンズとして大きな話題を集めました。
1960年のフォトキナで発表され、翌年61年(昭和36年)8月に発売されました。価格は57,000円。当時は月給が一万円くらいの時代であり、白黒テレビが給料半年分の65,000円と言われていますので、現在でいうところのノクチルックス相当の価格です。
専用の外爪マウントによってカメラに装着する特殊なマウントを採用しているためにキヤノン7とセットで使うレンズですが、近年ではMマウントへ改造して、M型ライカに取り付けられるものも多く存在しています。
世界を巻き込んだレンズの大口径化戦争
1950年代から世界各国で始まったレンズの大口径化により、日本のカメラメーカーは、フジノン50ミリ/f1.2、ニッコール50mm/f1.1、ズノー 50mm f1.1といった明るいLマウントレンズを次々に送り出しました。
そうした技術競争を終わらせたのが、1960年にフォトキナで発表されたキャノン50mm/f0.95という怪物レンズでした。
世界中を驚愕させたこのレンズの登場によって、ライカは社運を賭けてノクチルックス50mm/f1.2を開発したとも言われています。
規格外になるまで実現した明るさ
キヤノン 50mm f0.95はかなり有名なレンズです。それはずば抜けて明るいf値だけでなく、あまりに大きなレンズ玉のインパクトが強いせいもあります。何しろファインダーの1/4がレンズで隠れてしまい、ライツミノルタCLではほぼファインダーが見えなくなってしまいます。
巨大なのは60mmにもなる前玉だけではなく、後玉も大きくなりすぎたためにライカLマウント(スクリューマウント)では装着できず、外側にバヨネットマウントを付けた専用のマウントとしています。一部モデルではそれでも距離系連動カムを配置するために後玉上部が削られるなど、性能と小さなLマウント規格のバランスを極限まで追求した設計となっています。
比較的容易にMマウントに改造できるため、M型ライカのレンズ資産の一部として活用の道が開け、近年では中古やオークションでの価格も高騰中です。
絞りを開いて寄ってこそ味のある描写
f0.95の被写界深度の浅さを活かしたボケ味とはどんなものでしょうか。開放では背景が派手にボケて幻想的な雰囲気を醸し出します。照合部にもベールの掛かるような妖しさですが、2,3m被写体から離れたり、絞り込んだりするとシャープで「普通の」描写となります。レンズの性能を一定にするフローティング機構がないために、2m未満での撮影では収差が増大しますので、ポートレート撮影などではレンズの特色が出しやすくなります。
このレンズの真価は、至近距離で絞りを開いたときに発揮されます。ほんのりとした周辺減光と樽型の歪曲収差を活かすために、被写体を中央部に置くとよいでしょう。
大口径ファンが大絶賛するレンズ
f0.95という最大の明るさを持つことはもちろんのこと、幻想的なボケ描写とクセのある描写はこのレンズにしか出せません。その描写力に魅せられて、今非常に人気の高いレンズとなっています。
このレンズの明るさを実現するために、ガラス材の品質を均一に取りにくい高屈折ガラスを積極的に採用しているのもこのレンズのポイントです。「カメラマンのための写真レンズの科学」によれば、「ガラスはオハラ製で、前から順にLaSK(重ランタンクラウン)02、BaF(バリウムフリント)10、LaK(ランタンクラウン)13、SF(重フリント)4、F(フリント)16、LaSF(重ランタンフリント)01、LaSF01です。このうちLAK13は良質の材料を得やすいのですが、そのほかはみな製造困難、耐酸性や耐候性不良、屈折率のバラツキ、着色などの問題点に結びつきやすいガラスです。7枚構成にしたために、ガラスに負担がかかってきたのです。
」とあります。そのため、レンズ品質にバラツキが生じており、「当たり玉」と「ハズレ玉」があることでも有名です。「当たり玉」はよりシャープで、少し絞ったように被写界深度が深く見えるそうです。
特徴のあるフレアを発生させやすく、印象的な写真を撮るにはこれほど適したレンズはありません。マウントアダプターを組み合わせてミラーレス一眼で使うと、f0.95の世界がデジタルでも広がります。
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スペック
- 発売年
- 1961年8月
- マウント
- ライカスクリュー(L)マウント
- レンズ構成
- 5群7枚
- 絞り羽
- 10枚
- 絞り
- f0.95-f16
- 撮影距離
- 1.0m-無限
- フィルター径
- 72mm
- 重さ
- 605g
- 発売時価格
- 57,000円
- 設計者
- 向井二郎